洞川温泉ビジターセンター Dorogawa Onsen Visiter Center
奈良県吉野郡天川村にある洞川温泉エリアで、村が所有する温泉施設の老朽化により建替えを行い、地域の将来人口と施設利用者の増加を踏まえ、従来の温泉機能と観光情報発信や修験道体験案内、ハイキング用更衣室やロッカー機能を備えたビジターセンターの整備をすることに至った。
天川村は、およそ1300年前に役行者によって開かれた修験道発祥の地である霊峰大峯山を有しており、修験道の隆盛とともに大峯信仰の登山基地として栄えてきた。その中でも洞川温泉街は、修行に訪れた多くの修験者が湯に浸かり、心と身体を癒してきた歴史がある。
今回計画した本施設は、温泉街の入口に位置しており、人の流れを「洞川温泉街」や天然の観光資源である「みたらい渓谷」へと促し、村全体が活性化することを狙いとしている。
本計画では、まず県内に点在する家屋や周辺の山々と呼応するよう大和棟の屋根を採用した。急勾配の上屋根と緩勾配の下屋根が重なり合う屋根下は、利用者が長く滞在するビジター機能を集約した空間となっている。また、高さ1Mの積雪荷重を想定した無落雪屋根としながらも小屋組を複雑化せず、合理的な耐力壁配置によってクリアしている。
妻側のハイサイドライトからは、四季を通じて内部にやわらかい光と隣接する森の風景を取り入れた。木の構造躯体は、柱が120角、2間ピッチで配置して、見えてくる梁や座屈止めは120×150の材を主として構成している。建物は平屋建てであるが、最高高さ9.3M(3階建てに相当)となっており、高さのある気積に対して主な構造材が標準サイズ(小断面)でリズミカルに構成することで、軽快な構造の印象を与えている。
また、構造フレームには、照明器具や設備機器、建具鴨居との一体化を図り、見えてくる要素を極力少なくなるように意識している。
これから夏にかけて村の観光シーズンが到来し、本ビジターセンターを通して村の活気がより生まれることを期待している。
所在地 | 奈良県吉野郡天川村大字洞川 |
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用途 | 公衆浴場+観光交流施設 |
建築面積 | 1,155㎡ |
延床面積 | 855㎡ |
工事種別 | 新築 |
担当 | 京 智健、有信 晴登、山本 拓 |
構造 | 門藤芳樹構造設計事務所 |
電気設備 | エス・ケイ・ティ |
機械設備 | 若林設備工業 |
サイン計画 | hokkyok |
工事監理 | 中和設計 |
施工 | 森下組、中尾組 |
写真 | 森石風太(ナカサアンドパートナーズ゙) |
complete. 2024.03 |